目指したのは、“みんなが楽しめるテーマパーク”。古民家を改装してつくられたトレーニングスタジオ 『YUI-ONE』
あらためて、“古民家利活用” にはさまざまなカタチがあるのだなぁ、と実感しました。今回ご紹介するのは、結城駅北口から徒歩7分ほどの場所に位置する古民家スタジオ『YUI-ONE』です。
人が暮らすための住居や、物販を行うお店、飲食店などのために古民家を利活用する事例には、これまで幾度となく出会ってきました。が、パーソナルトレーニングやヨガ、ボディメイクなどをおこなうための “スタジオ” として古民家をリフォームするという事例は、今回がはじめて。トレーナーの石川 裕紀(いしかわ ひろのり)さんに、そのこだわりやあり方についてうかがいました。
“やっぱりトレーニングは、楽しいのが一番だから”
『上げて! 上げて! もっと! ラスト5回〜〜!!』
ハツラツとした声が、スタジオ内にこだまします。そのかけ声は、トレーナーの石川さんによるもの。トレーニーの方と息を合わせながら、元気いっぱいトレーニングをおこなっている最中でした。
石川さん:やっぱり、楽しいのが一番なんですよね。トレーニングって。『YUI-ONE』はパーソナルトレーニングとボディケアを中心メニューとしているスタジオなのですが、他にもグループレッスン(8人でヨガやストレッチなどのメニューをおこなうもの)などもおこなっていて。いわゆる普通の “トレーニングジム” のようなものだと、機材はたくさんあるけれど、それらを使って、どのようにトレーニングをおこなったらいいかはわからない。何から始めたらいいか、始めたにせよそのトレーニングは本当に効果的なのか、そういった部分がわからずに、トレーニング自体がどんどん楽しくなくなってしまう可能性も大いにあると思ったんです。
僕はもともと、指導することが大好きなんですよ。全日本クラスの柔道選手としてキャリアを終えたのちは、指導者としても活動していて。そういった経験から、言葉を真摯に選んだり、しっかりと考えながらやっていたおかげで、お客さんにもまっすぐ伝わっているみたいなんですよね。納得した上で、色々試してくれるんです。
石川さん:僕は、『YUI-ONE』を「トレーニングジム」とは名乗りたくないんですよね。あくまで “スタジオ”。僕とお客さんが対面して、あるいはプロジェクターを使ってスクリーン越しに指導することもありますが、あくまで「人と人のやりとり」にこだわりたいと思っています。一人じゃないんだ、トレーナーの方がついているんだ、仲間もいるんだ、とお客さまが思ってくれたら、それが一番良いな、って。コミュニケーションをとることで、みんなが和気藹々とトレーニングを楽しんでくれる。それこそがベストだと思うんです。
だから『YUI-ONE』は、テーマパークのようなものでありたいな、って。時にはパーソナルトレーニングを、別の時にはヨガを、また別の時には親子のトレーニングを。色々なことができる場所として、楽しい場所として、結城のみなさんに受け入れてもらえたらいいなぁと思います。
古きものを、活かしながら、つくっていく
『トレーニングは、楽しいのが一番』という言葉。穏やかな表情で、朗らかに笑いながら話す石川さんからは、相手へのリスペクトの心がひしひしと感じられるような気がします。ここで、特に「古民家利活用」についての話へ。
石川さん:古民家利活用の話で言えば、この物件自体の歴史については正直あまり明るくないのですが、相当古い物件だとは聞いています。もともとは下駄屋さんだったみたいです。特に大変だった点は、漆喰を塗ったことですね。粉の漆喰に水を混ぜて、それをあらゆる壁に塗っていきました。その準備として、まずは「下塗り材」と呼ばれるものを塗っていくんです。漆喰を塗った際に汚れが吸着しないようにするものなんですが、防止策として二度塗りまでしたのに、漆喰が乾いた時にはすぐ黄色になっちゃって(笑)。なんだかんだ時間がものすごくかかって、壁を塗ることだけで二週間ぐらい?はかかってしまいました。
石川さん:襖(ふすま)も、もともとは黄ばんでしまっていたのですが、モダンなテイストが感じられるよう、ペーパーを貼り付けてアレンジしました。襖としての機能は残しつつも、現代的に見えるようにしたのがポイントですね。手を加えすぎては、古民家としての魅力が損なわれてしまう。しっかり活かしつつも、自分の好きなアレンジは加えていく、ということを大切に感じていました。天井なんかも、もともとはかなり低かったのですが、開放感を生み出すために柱を一箇所切り落としたり。快適さを叶えつつ、それでも、古民家のムードは壊さないように心がけていましたね。
石川さん:僕は、“古民家利活用” の文脈だけでなく、結城の街自体にもとても大きな魅力があると思っています。僕の実家はこの近くで和菓子屋を営んでいるのですが、たとえばそこに『YUI-ONE』チラシを置くこともできるじゃないですか。そこはカフェも併設していて、ランチ営業もやっているのですが、そことタイアップして、ダイエット用の食事開発なんかも、やればできるはず。
結城の『KURA SAUNA』の二人には、一年ほど前に「ジムをやりたいと思ってるんだ。きっとコラボができたらいいなぁ」と話していたんです。その当時は確定こそしていなかったけれど、「いいですね! コラボしましょう!」と盛り上がって。『YUI-ONE』で汗をかいた後に、『KURA SAUNA』へ行けたりなんかも面白いですよね。
石川さん:結城には「この街を盛り上げたい!!」と思っている人が、とにかく多いんですよね。みんなが、街のことを考えながら、生きている。暮らしをおこなっている。仕事を続けている。お互いに支え合いながら。その中で、自分も “トレーニングスタジオ” という、また違う毛色で混ざれたらいいなぁと考えていますし、新しく結城の街に仲間入りしてくる方々にも、そう思ってほしいなぁと感じます。みんな味方ですから。みんなが、仲間ですからね。