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築40年の古民家に、夢とこだわりをいっぱい詰め込んで。自然とともに変化していく「家族の暮らし」とは。

 家族の暮らしを支える、「家」の存在。歴史の経過とともにそのあり方は変わっていくもので、たとえばそれは「欧米風のマンション」であったり、「和風の一軒家」であったり。場所や風土によって変化・進化してきました。

 ここでは、結城のとある空き家を利活用して暮らすことを決めた、奥澤さん一家をご紹介。日々の暮らしを支える「古民家」ならではの利点や魅力にせまります。

「古いもの」への想いが、この家を選んだきっかけでもあった

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 西日に煌々と照らされる、しっかり手入れの行き届いたお庭。ぐねりと曲がった立派な松の木や、少し色が落ちて渋い味が出ている石柱など、レトロな風情が伝わってくる「古民家」の象徴が並んでいます。

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『この家を選んだ理由として、もともと古いものが好きだったというのは大きいよね』『うんうん、たしかにそうだった』と懐かしそうに話すのは、こちらのお家でお子さん三人とともに暮らしている奥澤さんご夫婦。結城の街でこの物件を見つけるまでは、隣街の栃木県・小山市で暮らしていたといいます。

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 『長男が小学校に入学するタイミングで、引越しをしようと考えていました。でも、新しい家を建てるイメージは全然なくて。新築の家を見に行っても、正直あまり心惹かれるものは見つからなかったんです』と、奥さま。

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 『上手く言葉にするのはむずかしいけれど、「小さいおうち」への憧れがあったんですね。ちょっと不便だけど、そこも含めて面白い、楽しめる、といったようなていねいな暮らし。それはここを選んだ理由のひとつでもありますね』

“不便なところも愛したくなってしまうのが、古民家の魅力かも”

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 『ただ、正直「和風すぎる」という感覚は否めませんでした。戸もそれぞれ大きいし、ちょっと使いづらいかも、と思ったことは確か。でも、やっぱり素敵なんですよね。たとえばこの木の装飾なんかも、施工会社の方に「絶対このまま残してください!」と頼んだりなんかして。最後の方なんか、「なるべく生かせるものは生かす方向でお願いします。」なんて無茶ブリしたり(笑)

 奥澤さんの言葉の端々から、「古いものが持つ美への思い」がたっぷり感じられてきます。

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 『この障子、実は外れるんです。「大阪格子」というものらしくて。夏にはこれを外して風の通りを良くすることで涼しく、冬は取り付けて風を通さないようにし断熱の効果も。こうした「時代の名残」や「暮らしの工夫」を現代の生活に取り入れることは面白いなぁと思います』

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 ふと隣の部屋を見てみれば、古き良きちゃぶ台の上で切り絵をして遊んでいる姿が。家族それぞれの暮らしに優しく寄り添う、「古民家」ならでの良さが垣間見えたような気がします。可愛くってたまりませんね。

こだわりと古いものの良さを共存させ、暮らしをかたどっていく

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 『これこれ、懐かしいなぁ』と笑い合う、奥澤さんご夫婦。ご引越し当初の写真を集めた一冊のアルバムを見せてくれました。

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 『どの部分を残すか、という選択は正直とても難しかったですね。完成のイメージが湧かないし、何よりさっきも話したように、残せる部分はなるべく残したかったから。柱をズラしたりして手を入れた部分もあったんですが、その時に出来た穴や跡は、そのままにしています。リフォームを進めて行くうちに、それらもこの家の歴史の一部だと思うようになって。』

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 『また、新たに付け加えるものについては、大工の方が “家づくりは一生に一回なんだから、なんでも言っていいんだよ!” と言ってくださってありがたかったですね。何度も手を止めては「こうしたい」とか「ああしたい」とか、たくさん注文しました。』

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 『活かすところは活かしつつ、自分たちのこだわりを詰め込んだ家になりました。現代の暮らしと、昔ながらのモチーフを上手く取り入れられて。「2人ともエアコンの風が苦手だし家の雰囲気に合わない 気がして・・・空調をどうしようか?」と悩んでいたところ、建築士の飯野さんがパネルヒーター(PS)を提案してくださって。ここから渋谷まで、まさかの1時間もかけてショールームへ見にに行ったんです(笑)。飯野さんがいなかったら、こんな素敵なものには間違いなくならなかったですし、本当にみなさんのおかげですね』と、満足そうな顔で微笑み合う奥澤さんご夫婦。

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 『「この家で良かった」と思う機会がたくさんあるんです。冬の電気代は正直少し高いけれど、エアコンの風が苦手な私たちにはとても快適ですし、欄間、障子、書院、ふすまなど古民家の持つ美に囲まれて生活する幸せを感じたり。。本当に自分たちの暮らしに合っているなぁと、いつも感じますよ』

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 『前の家に住んでいた頃は、「街の人」を感じることが少なかったのかなぁと感じます。“人とのつながり” というか。いっぽう結城は、街の人との関わりが厚いなぁって。楽しそうに活動している方々を見て、私たちも入りたいな、みんなと楽しんでみたいな、と思うことが多いなぁって。人と人とのあたたかいつながりが感じられる街だなぁ、って』と、結城の魅力について語ってくださった奥澤さん。

 終始笑顔の絶えない和やかな表情で、ご自身のお家と同じぐらいに結城の街を大切にしていると話してくれました。

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 常に、一人ではなく、たくさんの方々が関わる「ものづくり」を重んじてきた街・結城。結城市を盛り上げる結プロジェクトメンバーであり、『yuinowa』の創業メンバーとして結城の方々の挑戦を支えている野口さんや、建築士の飯野さんなど、空き家オーナーさんを繋げてくれる方・想いを形にしてくれる方がいます。彼らはきっと、実際の手助け以上に、結城で暮らそうと思っている方々の「心」を助けてくれるような。

 人と人とが支え合い、助け合いながら生活していくこの街のスタイルは、きっと今後も、奥澤さんご家族の暮らしにもぴったりと寄り添っていくはずです。「古民家利活用」が暮らしを支えていく、ということの真髄をみたような気がしました。


※取材先情報は一般宅のため割愛いたします。