テーマは、特に決めない。ひとつの “居場所” として、さまざまな可能性が広がっていく物件。
“空き店舗利活用” とは一口に言えど、特段明らかな「目的」がなくったって、きっと素敵だと思うのです。
今回ご紹介する空き店舗利活用物件は、結城市役所の職員である小貫さんが、仲間とともに作り上げようとしている“居場所” 。
「 “プレイスメイキング”っていうと少し大袈裟ですが、そんな感じですね。仲間を集めて、ここにどんな場所があったら面白いかを話し合って、実際に自分たちの手で創り出してしまおうというプロジェクトです。この過程そのものが“居場所づくり” になるのかなと。この一連の過程に携わった人たちが、自分たちの居場所として自由に使ってくれたら、きっと新たなコミュニティが生まれていくのではないかという仮説のもと進めてます。だからこそ、特に “目的” は無いんですよ。」と、にこやかに話す小貫さん。
物件の利活用方法についてお聞きしつつ、物件そのものの魅力にせまります。
今回ご紹介する物件は『Coworking & Café yuinowa』の二軒ほど隣にある建物。ちょっぴりナナメになった雰囲気、かなり味があっておもしろい感じ。
「ここって、お祭りの時なんかに歩行者天国になる通りなんですよ。そんなところに、いつでも自分が出入りできる居場所があったらワクワクするじゃないですか。それがこの物件を借りた最初の理由ですね。あとはやっぱり、最近このエリアでの創業とか出店が徐々に増えてきていて、担当の業務で伴走することがあったり、コミュニティに触れていく内に“自分もシャッター開けちゃいたい”みたいな焦燥感に駆られた部分も大きいですね。」
現在は、タイルを剥がしている途中段階なのだとか。「ここはA型の人が剥がしてくれたところ。こっちはO型の人が剥がしたところです。血液型で性格がバシッと決まるわけじゃないとは思うけれど、世に言う性格診断の結果が顕著に出ていて面白かったですね」と、小貫さん。みなさんで楽しみながら改修工事をおこなっているのだそう。
「昨年、地域おこし協力隊が結城市初のソーシャル系大学として“結城マチナカ大学”を設立したんです。その中の取り組みで、実践からDIYを学ぼうという趣旨から、この物件を実際に改修することで、学びを深めようという企画が立ち上げられて。壁を張り替えたり、それこそタイルを剥がしてみたり。みなさんの協力があっての、この物件なんですよね。」
※ソーシャル系大学・・・法律が定める正式の大学ではない。まちに住む人々が時には先生、時には生徒になり、学び合いを通じて地域の友人知人を増やしていくコミュニティ。
後付けではないのですが、なんとなくこの物件からは “あたたかさ” のようなものが感じられるような気がしていて。その正体は、“みんなで協力して作り上げていること” からくるものだったのでした。
「薄々お気づきかとは思いますが、この物件、半分勢いで借りてしまって(笑)蓋を開けてみたら本当にボロボロで、自分ひとりでリノベーションするのはとても難しく途方に暮れていたんです。ある日、インスタで出会った方と一緒に釣りに行くことになり、色々話していたら、まさかの結城の人で、しかも大工さんで(笑)。滞っていたこのプロジェクトが一気にスタートしたんです。ちなみにですが、これは市役所の業務ではなく、個人的に取り組んでいることなので予算がカツカツです。応援お待ちしております(本気)」
小貫さんは、この物件をどんな場所にしたいと思っているのでしょうか。
「“大人の部室”みたいになったら、おもしろいかなぁと思っているんですよね。あんまり具体的な目的を決めるのも、ちょっとなぁ、って。たとえばワークショップがおこなわれていても楽しいだろうし、レンタルスペースとしての機能があってもいい、とある日には宴会がおこなわれていてもおもしろいだろうし、プロジェクターで映画も観たい。“みんなが思い思いに集まれるハコ”としてのあり方も、きっと良いと思うんです。そうなったらいいなぁ、と。」
良いなぁ、すごく良いなぁ、と感じました。感想こそ月並みになってしまうのですが、心から、そう感じさせられてしまいました。
「リノベを勉強したい方、まちづくりや拠点づくりに携わりたい方、市内外問わずビッグウェルカムです。もしこの記事を見て少しでもオモロイなぁと思ったら連絡ください。面白い方、歓迎します。」
“利活用” には、たくさんの “幅” があって良いと思うのです。もちろんお店を新たに始める方も、とっても素敵。たとえば、住居として。アトリエとして。倉庫として。さまざまな “利活用” の方法があって、それらはいずれも素晴らしいと思うのです。小貫さんのおっしゃるような、“大人の部室” だって、きっと素敵なアイディア。
あらためて、“空き店舗利活用” の健やかな可能性を感じました。きっとこの “部室” から、たくさんのアイディアや催しが生まれるんだろうなぁ、なんて。仲間たちとの思い出と、きらめく発想や希望が詰まった、ひとつの “ハコ” としての場所が、もうそろそろ完成しそうです。