宿泊施設づくりを通じて、みんなで肩を組み、結城を盛り上げていく。建築家・飯野勝智さんと商工会議所・野口純一さんの挑戦
結城の街に、 新たな “宿泊施設” が誕生することになりました。
七代続く左官屋の息子として結城に生まれ育ち、建築家の飯野勝智さん。そして、アパレル業界から商工会議所へと活動のフィールドを急展開させた、野口純一さん。この二人が肩を組み活動を始動してから14年、結城の街に次なるチャレンジとして、フレッシュな風とあたたかなつながりを生むための “宿泊施設” を作っています。
その舞台となったのは、以前YUILABOの記事でも紹介した、一軒の空き家。“光と影が織りなす、あたたかな空間美” と銘打って紹介した、あのおうちでした。
ここでは、結城商工会議所 経営指導員であり、今回のプロジェクトの発起人でもある野口さんにお話を伺います。結城の街に宿泊施設を作る意義、彼が見つめる未来について。ぜひお楽しみください。
体験的に結城の街を楽しめるような、そんな取り組みとしての宿泊業
「三年の構想期間を経て、やっと着手することができました」とにこやかに笑う、野口さん。宿泊施設について、語ってくれました。
「この宿泊施設は、“地域に貢献できる宿” にしたいんです。これまで、結城市に関わることをずっと続けてきた僕たちとして、たとえば『街なか音楽祭 結いのおと』や『Coworking & Café yuinowa』などもそうですが、それらはすべて “結城に来てもらうための取り組み” だと捉えているんですよね。そういったことを10年近く続けてきて、そこで出会った出店者さんや、結城で何かをやってみたいと感じてくれた方など、たくさんの方に出会ってきました。
いわば “街と人を結ぶ場所” としての『アートフェス結い市』、『街なか音楽祭 結いのおと』や『Coworking & Café yuinowa』などが、できた。僕たちは、その次のフェーズとして “結城に長く滞在できる場所” を作りたくなったんです。結城に来てくれた方々が、結城に住んでいる人たちと交流できるような、結城での滞在時間から何かが生まれるような、そんな場所を作りたかったんですよね」
「たとえば、今日(取材当日)おこなわれている “結いマルシェ” だってそう。ロウリュを用いたテントサウナの体験ができたり、草木染めの体験ができたり。この宿泊施設に泊まることによって、結城にまつわる何か楽しいレクリエーションに参加することができる。そんな場として機能したらいいなぁ、って」
「いろんな人たちと一緒に肩を組んで、結城の街の魅力を高めていく。この宿でもそういうことをしたいんですよね。これまで、日本全国たくさんの方々と繋がってきたからこそ、その “財産” を上手く使いながら、結城の魅力も知ってもらえるような。そういう場所にしていきたいですね。
なので、軽い朝食こそ用意しようと思っているのですが、基本的に “料理” は提供しないことにしました。せっかくなら、結城の街で、結城の料理を食べてほしいから。結城でできた食材を買ってきて、宿泊者みずからが、この宿泊施設で調理するのなんかも面白いですよね。体験的に結城の街を楽しめるような、そんな取り組みをこの場で続けていきたいと思っています」
非日常空間ではなく、あくまで “結城の街の日常の延長” を
これまでの経験を通じて得られた、財産としての人とのつながり。それらをヘルシーな形で結城の街に還元するため、“宿泊業” をひとつの手段として捉えつつ活動をおこなう。そんな熱い想いは、クラウドファンディングでの “支援金 300万円達成” をかなえました。
ただ、築90年ほどの物件を利活用する、ということはなかなか厳しいものだったと、野口さんは話します。
「正直なことを話せば、一度は頓挫しかけたこともあったんです。自分の家としてこの物件を持っている方ですから、もちろん深い思い入れもあるでしょうし。ご家族のこと、近所のこと、さまざまな事象を解決していかなくてはならない。単純に「この物件を売ってください!」だけでは済まないことが、たくさんありますよね。
その点では、これまでは結城に数々ある空き家の利活用をしたい方々の後押しをしてきた自分が、いざ自ら “プレイヤー” となるのは、とても過酷でしたし、同時にすごくワクワクすることでした。金額も大きいですし、ね。そしてそもそも、購入はゴールじゃないですから。ここからまたお金がかかってくることは見えている。
そこで、2022年の10月に、クラウドファンディングをおこなったんです。「僕らの街に宿をつくる」をテーマにしたものですね。そうしたところ、目標金額を超えるご支援をいただいて。さらには、「結城の宿の片付け大作戦」と題して、この宿の物件の片付け作業をみんなでおこなうことにしたところ、多数の方々が集まってくれたんですよ。
「県外の方も、来てくれて。古民家利活用についての話をしたりして、来てくださった方にとっても実のある時間になったんですよね。ここで確信したのは、“初めて会う方たちとも、きっとやっていける” ということでした。県を跨いで、いろんな人が来てくれるんですから。そういう意味でも、きっとこの宿泊施設は、面白い場所になると思います。"みんなでつくった場所"としてですね。内装の趣は残しながら、もちろん直したい部分もあるので、少しだけ手を加えながら。
お客さんとしては、若年層の方をイメージしている部分が大きいです。それも、これから結城として繋がっていけるような方ですね。宿泊を通じて、結城の魅力に気づいてくれたり、面白がってくれたりするといいなぁと思います。「結城って面白いじゃん」なんて言ってくれたら、最高ですよね。
僕が昔勤めていたような、アパレルの方だったり、たとえば美容師さんだったり。サブカルチャーが好きで、結城を深掘りしてくれるような方が泊まってくれたら、うれしいです。結城の面白い側面を、“僕らと一緒になって面白がってくれる人” ですね。
そういった方が、“ハレの日” 的ではなく、“日常の延長” として宿泊してくれることが、僕らの見据える未来ですね。そしていつか、結城のいたるところに宿泊施設をつくって、「結城の街はどこでも宿泊ができる」なんて言ってもらえたら、そんな未来を実現できたら、それほど喜ばしいことはないなぁと感じます。オープンは5月の予定ですが、今からとってもワクワクしていますよ」